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東北大学大学院生命科学研究科回路脳機能分野
兼・東北大学大学院医学系研究科回路脳機能分野

主な論文

Beppu K, Sasaki T, Tanaka KF, Yamanaka A, Fukazawa Y, Shigemoto R, Matsui K* (2014) Optogenetic countering of glial acidosis suppresses glial glutamate release and ischemic brain damage.
Neuron, 81: 314–320.
( equal contribution, * corresponding author )

グリア細胞の活動を光で自在に操作する新技術を用いて、脳虚血時にはグリア細胞の異常な活動が過剰なグルタミン酸の放出を引き起こし、その結果、脳細胞死が生じることを明らかにした。放出のメカニズムとしては、グリア細胞内の酸性化が直接の引き金となるという、全く予想外のものであった。さらに、光操作技術でグリア細胞をアルカリ化すると、グルタミン酸放出が抑制され、虚血時における脳細胞死の進行を緩和できることが分かった。光遺伝学技術を細胞内pHコントロールに使うというこれまでにないアプローチであり、細胞内シグナルとしてCa2+のみが取り上げられているが、H+も重要なシグナルとして細胞機能を左右している可能性も示唆された。



Sasaki T, Beppu K, Tanaka KF, Fukazawa Y, Shigemoto R, Matsui K* (2012) Application of an optogenetic byway for perturbing neuronal activity via glial photostimulation.
Proc Natl Acad Sci U S A, 109: 20720–20725.
( equal contribution, * corresponding author)

グリア細胞に光感受性分子(チャネルロドプシン2)を発現させ、光を使って脳内のグリア細胞の活動を自在に制御。グリアから神経へ向かう信号伝達の存在を示し、グリアの作用によって小脳運動学習が促進されるなどの効果を発見。



Budisantoso T, Matsui K*, Kamasawa N, Fukazawa Y, Shigemoto R (2012) Mechanisms underlying signal filtering at a multi-synapse contact.
Journal of Neuroscience, 32: 2357–2376.
( equal contribution, * corresponding author)

視覚を対象にして、個々の受容体局在をナノ単位で明らかにする微細形態学と、シナプス伝達をミリ秒レベルで計測する電気生理学を組み合わせ、併せて、数理的シミュレーションも駆使することで、シナプスから神経伝達物質が溢れ出る様態を示した。外界を把握する性能は、神経細胞間のシナプスの形に左右されることが明らかになった。



Matsui K, Jahr CE (2006) Exocytosis unbound.
Current Opinion in Neurobiology, 16: 305–311.

神経細胞からの伝達物質の開口放出は、シナプスにおいてしか起こらないと考えられてきたが、シナプスの外、グリア細胞に面した箇所でも放出が起こることが示された。下記の論文を皮切りに異所放出の事例が次々と発見されたが、それらを総説し、この新たな信号伝達経路の機能的な役割を考察した。



Matsui K, Jahr CE (2003) Ectopic release of synaptic vesicles.
Neuron, 40: 1173–1183.

シナプス前細胞を電気刺激し、シナプス後細胞・グリア細胞の両方から記録するという精緻な電気生理学実験によって、シナプス外において生じる異所放出の存在を世界で初めて明らかにした。神経からグリアに向けて生じる信号伝達は、神経間のシナプス伝達の単なる副産物ではなく、異所放出という経路を使うことで、神経に匹敵する速さの応答がグリア細胞で実現されていることが分かった。



Matsui K, Hosoi N, Tachibana M (1998) Excitatory synaptic transmission in the inner retina: paired recordings of bipolar cells and neurons of the ganglion cell layer.
Journal of Neuroscience, 18: 4500–4510.

網膜の双極細胞では、神経細胞でありながら、急峻な活動電位は発生せず、緩やかなアナログ的な電位変化で視覚情報をコード化する。この細胞からの信号を受け取る神経節細胞ではデジタル的な活動電位が発生するわけだが、この二つの細胞間の信号伝達を解析することで、素早い信号とゆっくりした信号の両方を符号化するための受容体配置があることが明らかになった。



キーワード

オプトジェネティクス、光遺伝学、光電脳生理学、二光子イメージング、電気生理学、パッチクランプ、シナプス伝達、伝達物質スピルオーバー、拡散シミュレーション、受容体動態モデル、異所放出、グリア細胞、アストロサイト、病態脳、脳細胞コミュニケーション